記憶の摩天楼
従来のメモリー記憶媒体は、シリコンウェハーという広大な更地に、平屋の書架を並べることで発展してきた。 しかし、都市が人口過密で空を目指しているように、情報の過密もまた空間を目指し始めた。 CXMTが進める「3D積層型FeRAM」や、SKハイニックスの「5ビット/セルNAND」。 これらは半導体の世界における容積率の緩和だ。 平面上の微細化というルールが物理的限界に達した今、我々は情報を垂直に積み上げる記憶の摩天楼を建設する時代に突入した。
忘却の克服
構造の進化だけでなく、質料の進化も起きている。 従来のDRAMは、例えるなら底に穴の空いたバケツだった。水を入れてもすぐに漏れ出すため、絶えず水を補充し続けなければならない。これを揮発性と呼ぶ。 しかし、キオクシアが提示するIGZO(酸化物半導体)を用いた3D DRAMは、バケツを密閉されたガラス管へと変える。漏れがなければ、補充はいらない。 あるいは、FeRAMのようにバケツの底に磁石を敷き、水の代わりに鉄粉を入れるアプローチもある。これなら電源を切っても情報は張り付いたままだ。 これらは、コンピュータの記憶階層を再定義しようとしている。
空間コンピューティングと人間の認知能力
ハードウェアが2次元から3次元へと拡張されたのと呼応するように、ユーザーインターフェースもまた空間コンピューティングによってZ軸を獲得しつつある。 しかし、ここに落とし穴がある。 摩天楼が林立する都市が必ずしも住みやすくないように、3次元化されたUIが必ずしも使いやすいとは限らない。 平面の制約がなくなったことで、我々は無限に情報を配置できるようになった。だが、人間の認知能力は依然として有限のままだ。
積めるからといって、積むべきではない
情報の高度化が進むこれからの時代、デザイナーに求められるのは、この新しい建築をいかに制御し、あえて空を残すかという、都市計画的な倫理観である。