Tomohiro Ogawa
#001

The Fall / 落下の王国

ユーザーの介入によって完成する未完の美。

物理的制約による痛みの証明

なぜターセム・シンはCGを拒絶したのか? それは主人公ロイのアイデンティティである痛みを、物理的に保証するためではないだろうか。 ロイはスタントマンであり、落馬事故で下半身不随となり、職も恋人も失った。 もしこの映像美がCGによって生成されたものであれば、スタントもCGで代替可能であるというメタ的な疑念が生まれ、ロイの絶望は観客に届かない。 そこに実在したという物理的な事実だけが、虚構の物語に重力を与える。

相互作用としての物語論

当初、ロイは少女に物語を語ることで彼女を操り、死ぬための薬を得ようとしていた。 しかし、少女は物語に強く惹かれ、介入し、結末を書き換えようとする。 物語の結末が他者によって変質するプロセスを目の当たりにした時、ロイは気づく。 この人生というコンテンツは、シングルプレイヤーモードではなく、他者との相互干渉によって成立するマルチプレイヤーモードであることを。 これは、「未完のシステムが、ユーザーの介入によって初めて完成する」というWebの構造と酷似している。

心象風景のヒートマップ

画面を埋め尽くす極彩色は、単なる装飾ではない。 現実世界の少女が物語に深く介入するにつれ、映像の彩度とコントラストは上昇する。 無機質で彩度を失っていたロイの絶望的な世界が、少女との相互干渉によって有機的な色彩を取り戻していく。 あの色彩は、感情のデータビジュアライゼーションとして機能している。